。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、オジェすは走った。
オジェすの頭は、からっぽだ。
何一つ考えていない。(本当に考えてない)
ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。
陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、
消えようとした時、オジェすは疾風の如く刑場に向かって走り出した。
オジェす「龍スゲェ!!」
龍「お前それより、死刑止めにいかなくてええのんか?」
オジェす「忘れてたのですよ?」
一方・・・その頃
☆楽しい処刑場☆
遂に死刑当日・・・
死刑執行官「ハッハッハ!これまでよな。モチヌンティウス王よ。」
死刑執行官はとても大きな刃物を手に、モチヌンティウスを見詰めていた。
その瞳は冷たい無機質なガラスのようであった・・・
モチヌンティウス「ぬぬぅ。」
モチヌンティウスは穏やかならぬ心持であった。
抗える限り抗った
されど、あの男はどうにもならなかった。
何でクリスマスプレゼントが欲しいと言ったら・・・
死刑になるのか・・・・さっぱりわからなかった。
やまだ「ポポポーン。」
モチヌンティウス「あ、やまだだ。」
死刑執行官「あ、ホントだ。」
何故処刑場にやまだが居るのか?
それは二人にもわからない。
そして・・・
死刑執行官「クックック・・・貴様の王位は全国の恵まれない子供達に分け与えてくれるわ。」
モチヌンティウス「・・・どうやって?」
死刑執行官「貴様がソレを知る事は無い!!!」
モチヌンティウス「!!!」
しかし、冷たい刃がモチヌンティウスの肉を切り裂く事は無かった。
死刑執行官「クックック・・・簡単に殺してはもったいない・・・」
その命を弄ぶ快感に死刑執行官は酔いしれた。
モチヌンティウス「おのれぃ!なぶる気か!!!」
モチヌンティウスは激怒したが、だからってどうにもならなかった。
その時・・・・!
やまだが商品を取り出した。
レゾナンスな良いライフル。
素敵だ。
やまだ「なんと、総銀造り。柄には博多の塩をまぶしてあります。」
死刑執行官「欲しいね。」
モチヌンティウス「うむ。」
そして・・・・ついに、彼が!!!
「待て。その人を殺してはならぬ。オジェすが帰って来た!!」
オジェす「約束のとおり、いま、帰って来た。」
と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが
オジェす「・・・?アレ?ウサギ?もっちーの服も違うんじゃね?」
モチヌンティウス「だって、これ夢だし。」
夢だった。
死刑執行官「げぇ!貴様はオジェす!!!」
オジェす「ZZZ・・・・」
モチヌンティウス「・・・・なんで寝てるの?」
モチヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。
オジェす「モチヌンティウス。」
オジェすは眼に涙を浮べて言った。(起きた際のあくびで溜まった綺麗な涙)
「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で何度も君の事を忘れた。
君が若(も)し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
モチヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯(うなず)き、
鈍器を取り出して殴りかかった。
モチヌンティウス「死ねぃ!!!」
オジェす「げぇ!割と本気なのですよ?!」
モチヌンティウスは割りとマヂに殴りかかった。
オジェす「ぐほぁ!マヂで痛い!!」
モチヌンティウスは殴ってから優しく微笑(ほほえ)み、
「オジェす、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。
私はこの三日の間、たった二万三千九百八十一度だけ、
ちらと君を疑った。
数え切れない数、君を疑った。
君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
オジェす「おっしゃー!!!」
オジェすの闘気が爆裂した。
ヤマダは何故か処刑場に入ってきてアピールを開始した。
黄金楓丸。銘銃である。
むしろもう黄金やまだ丸である。
モチヌンティウス「げぇ!必殺技のにおい。落ち着いて、深呼吸でもしろオジェす。」
オジェす「した。」
気弾がモチヌンティウスに放たれた
モチヌンティウス「GUWAAAAAA!!!」
やまだ「何と、今ならキシリトール54%配合。」
とても歯に優しい銃である。
流石やまだ。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、
それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
本当はお互いの攻撃がとても痛くて泣いた。
モチヌンティウスに至っては衝撃で服が消し飛んだ。
群衆の中からも、歔欷(きょき)の声が聞えた。
死刑執行官は、群衆の背後から二人の様を、
まじまじと見つめていたが、
やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて・・・・
やまだ「美しいな。友情と言うものは。」
職人の目に涙が浮かんだ。
やまだ「おまえらの望みは叶(かな)ったぞ。
おまえらは、わしの心に勝ったのだ。
信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。
どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。
どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」
どっと群衆の間に、歓声が起った。
「万歳、やまだ万歳。」
死刑執行官「え、え、え???」
死刑執行官はいつの間にかやまだに美味しい所をとられた。
ひとりの少女が、豹柄のバスローブをモチヌンティウスに捧げた。
モチヌンティウスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。
やまだ「モチヌンティウス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのバスローブを着るがいい。この可愛い娘さんは、貴君の完全な裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
王者は、酷く赤面した。
この話を、友情と信義を諦めない全ての人に捧ぐ・・・
やまだ「って言う話だったのさ。」
少女達「ふーん。」
FIN・・・・次の作品をご期待下さい。
おそらく次は 名探偵 オジェムス・・・